入らずの山で、年輝は妖怪に気に入られたのかもしれない。いや、この顔のお陰で、妖怪の仲間と思われたのか?
          
  「イーシャの舟」 岩本隆雄  ソノラマ文庫

 かつて入らずの山と呼ばれた場所、いまは産業廃棄物処理場予定地となったところに、宮脇年輝は偶然出会った女性に頼まれて、落し物のノートパソコンを拾いに行った。だが、そこにあったのはノートパソコンだけではなく、いびつに割れた椀形陶器。そして、直径一メートルもありそうな銀色の球体の中に蹲った小さな姿……。
 幻覚に違いない、と自分にいいきかせてみたものの、その夜から、年輝の家にはすっかりなじんでしまった妖怪が住みつくようになってしまった。まだ子どもの妖怪のいたずらによって、せっかく得た職を失い、多大な借金を背負ってしまう年輝。けれど、どうやら天邪鬼らしいと検討をつけたこの妖怪のおかげで、年輝は生活そのものに張りを感じ始める。とはいえ、心は前向きでも極貧でやせ細っていく親友を心配した三島亨は、そもそも年輝が天邪鬼にとりつかれるきっかけとなった女性、加賀山和美に責任をとらせようとするが、和美には和美の思惑があった。そんなとき、天邪鬼が現れた入らずの山の池から、宇宙船らしきものが発掘される。天邪鬼は妖怪ではなく宇宙人だったのか? 
 "21世紀に甦った瓜子姫物語……?"と帯にあるのだが、このあたり、「瓜子姫」を知っている人にとっては激しくネタばれの可能性あり。ハッピーエンドの「瓜子姫」になっている、とでもいおうか。SFとしてはネタが中途半端すぎる部分はあるのだけど、小さい頃の天邪鬼が可愛いので許す。「星虫」とキャラがかぶっている部分があるので、「星虫」かあ、懐かしいなあ、なんていう人にはオススメ。




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