「――で、霧ヶ峰君」
 試合終了後、スクワット・コールに疲れ果ててヘトヘトの僕に、石崎先生が尋ねた。
「判ったんだろーね? 人間消失の謎は?」
 忘れてた。

               「放課後はミステリーとともに」東川篤哉  実業之日本社


 鯉ヶ窪学園高校の「僕」、霧ヶ峰涼。エアコンみたいだとかいわれているが、れっきとした人間で、探偵部の副部長。今日も今日とて、学園内外に発生するさまざまな謎を解きまくる……わけではなく。事件は次から次に起こるのだが、実際に謎を解くのは、大抵、霧ヶ峰の近くにいる別人。「僕」があっさり見逃した点を指摘し、裏の動機を読み取って、かっこよく真相にたどりつく。
 連作短編集。
 「霧ヶ峰涼の屈辱」からはじまり、「霧ヶ峰涼の二度めの屈辱」に終わる物語には、密室その他、本格ミステリばりの謎が次々。全員に動機も手段もあった毒殺未遂。毒を入れたのは誰か……とか、消えた煙草、とか、人間入れ替わりのトリックとか。とはいえ、そこにはつねにユーモアたっぷり、というのが、さすが「謎解きはディナーの後で」の東川篤也である。霧ヶ峰涼のどじっぷり、ぼけっぷりが、物語のひとつの味つけになっている。
 たしか、これとは違う東川篤也作品の解説にあったのだが、東川作品というのは、ひとつだけ読んでも、いまいちおもしろさがわからないというか、くだらないなあ、くらいで終わってしまうことが多い。だが、二冊、三冊と読みすすめるうちに、そのゆる〜い感じがクセになってしまう。「謎解きは……」はイマイチだったな、という人も、この作品を読んでみることをオススメする。もしかしたら、ハマるかもしれない。
 ちなみに映画化決定……映像化はできない話だと思ってたんだけどなあ(←理由は読んだ人にはわかる)。



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