「あの高いところには、いつもおどろくほど新しいものがあるのを知ってた?」
              「星をまく人」キャサリン・パターソン(岡本浜江訳) ポプラ文庫

 エンジェルは11歳。けれど、父さんは刑務所だし、母さんはエンジェル以上に子どもみたいでいい加減。弟のバーニーはわがままばかりで、いつもエンジェルを困らせるようなことばかりいう。壊れそうな家族をなんとか形にするために、エンジェルは他の子どもたち以上にしっかりと、責任感を持って気丈に生活している。けれどある日、母さんはエンジェルとバーニーをひいおばあちゃんの家に預けて、どこかに行ってしまった。ひいおばあちゃんの家には豆の缶詰しかなくて、栄養だって偏っている。このままでは福祉の人たちに連れていかれて、姉弟ばらばらになってしまうかもしれない。エンジェルはこの状況の中でも、なんとか様子を取りつくろおうとするが……
 ほとんど育児放棄の状態におかれた姉弟の物語。エンジェルは幼くしてバーニーの母親がわりになろうとし、ひいおばあちゃんとバーニーの栄養に気をつけ、なじめない学校にも通うように努力している。それでも、ふと心が折れそうになるとき、エンジェルを慰めてくれたのは夜空に広がる星たちだった。
 刑務所にいる人たちや、彼らの家族を取材して書いた物語なのだという。父親も祖父もその兄弟も刑務所に入った過去を持っていたり、ちゃんと育てられた過去を持たないから、自分も子育てなんてできないと言いきってしまったりする親たち。だからこそ、エンジェルはバーニーだけは刑務所に入るような人になってほしくない、と頑張るのだ。このような家族は決してめずらしくないのだという。
 物語が終わった後も、エンジェルの生活は続く。いったいどうなっていくのだろう。その先に光があることを、願う。