戯れに本音で語る「ヒストリアン」

 ばった切れば「図書館を作りたい吸血鬼の物語」。
 ……でしょ?
 のっけからなんだが、まずはこれなくしては語れないでしょう、ヒストリアン。
 これまでさまざまな描かれ方をしてきた吸血鬼だが、自分のための図書館を作りたいがために学者を狙う吸血鬼って……すみません、思わず笑っちゃいました。
 やけに図書館員だの学者だの大学院生だのが出てくるなあとは思ってたんです。図書館が絡んでくるシーン多いし。まさか、分類法を知ってるからって……日本人にはありえない発想ですね。図書館が重視されている欧州ならではのアイデアといえるでしょう。これがもうちょっと作者が違ったタイプの人だと、マイクロ化の技術を持っている人とか、デジタルアーカイブスを作れる人とかが狙われてたんだろうなあ……(笑)。その場合、タイトルは「アーキビスト」?(う、このネタでパロディ書きたい)
 物語の構成に関してなんですが、個人的にはゴダードスタイルのほうが好き。
 ポールの過去が少しずつしか明らかにならないのだが、いくら16歳の少女だとはいえ読むのが遅すぎじゃないか!? もっと一気に読め、一気に。とはっぱかけたくなってしまうのである。小出しにするのがテクニックだとは思うのだが、小出しにしすぎ。これがゴダードの作品だったら、一晩に(もしくは電車の中に乗っている間中)読めるだけ読んじゃうだろうから、父の過去はもっともっと早くに明らかになるはずなのである。
 まあ、そういうわけで、実はオススメ本にいれようかどうしようか悩んだんですが、図書館で3か月近く(以上?)待たされたことを思うと、感想を書かないわけにもいきませんでしたわ(笑)。
 この物語については大いに語りたいものである。そういう意味で、ぜひ読んでみて。というような作品ではあります。



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