「人間ってのはさ、好き嫌いがあって当然なんだ。だけどたしかなことは、人を好きになって得をすることはたくさんあるけれど、嫌いになって得するなんてことはめったにないってことさ」
          
  「おれは非情勤」 東野圭吾  集英社文庫

 「おれ」はミステリ作家を目指しながら、小学校の非常勤講師をし、あちこちの小学校を転々としている。産休や病休の先生の代わりに数ヶ月間だけ担任する子どもたちのことなど大して気にもしていないが、行く先々の学校では、体育館で女性教師の死体が発見されたり、盗難事件が発生したり、自殺未遂が起こったり。次々に起こる事件を、「おれ」は生徒たちのささいな会話の断片からクールに解き明かす。
 非常勤ゆえに、二か月だけ、もしくは半年だけうまくやればいい、と開き直り、子どもたちが純真で無垢な存在であると信じてなんかいない。どうせ非常勤だからと思われたとしても、実際に非常勤なんだから。だが、そんな風にいってはいても、子どもたちの行動や会話には敏感で、それを謎につなげていく手腕、そしてちゃんと子どもたちの心理までフォローしていく姿は見事である。結局、あちこちの学校を渡り歩いているがゆえに教育のプロになっているというオチか。
 この本には「おれは非情勤」の他、2篇のジュブナイルミステリが収められている。学校や学校の近くで起きた事件ばかりを扱った短編集。ダイイングメッセージや脅迫文など、残された文章に隠された謎を解き明かす作品が多い。気軽に読める作品である。



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