「待ってぇ〜。その選挙カー、待ってよ。まだ公約を聞いてないよ! 逃げる気か。正々堂々と勝負しろ!」
      
五條瑛 「有権者の鑑」(「ああ、恥ずかし」所収) 新潮文庫

 恥ずかしい話を思い出してみたって、この人たちには負ける(勝ちたくもないが)。服の裾からずるずると先日脱いだストッキングが。後ろを振り返れば胸パッドが。なんだってそんなものがずり落ちるんだ。どうせ誰にも見られないだろうと、レースのパンティから、娘のお古の勿忘草の古パンティに履き替えたその日に病院に担ぎ込まれ、お医者様から看護婦さん、救急隊員の皆々様、付添いのお隣の山口夫妻、全部の人にそのパンティを見られてしまう――おいおい。
酔っ払ってパトカーの中でおおはしゃぎして、「運転手さあん! 遠まわりして、ぐるっと、ぐるっと、いつもより、よけいに回ってくださああい」などと叫んで…いいのか。
 作家、イラストレーター、女優、タレント、漫画家などなど、女性ばかり七十人が明かした「恥ずかし」体験。複数の人がストッキングずるずる体験だの、制服のスカートをはき忘れてコートを着て学校に行ってしまった、などの経験をしている(そういえば、わたしも知っています。パジャマの上に制服のジャンパースカート着て学校に来てしまった同級生…あの人、いまごろどうしているかしら)。
 とにかく、頭を使わずに読める一冊であることは間違いない。
 え、わたし? うーん……大したことじゃないけど、小学校のころ、夏休み明けにビーチサンダルで登校しちゃったとか、ランドセルを学校に置き忘れて帰ってきたことが数度あるとか、それくらい。ま、大したことじゃないです。……よね?


 なお、中山可穂がサイン会でのちょっとした話を書いていて、要チェックかも(笑)。



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