「わたしたちには、始めてしまったことをどうにかして終わらせる責任があるわけ。それをするためには、わたしたちも手を血で汚さざるを得ないでしょう」
   
      「反逆者の月3:皇子と皇女」デイヴィッド・ウェーバー(中村仁美訳) 早川書房

 「反逆者の月」「反逆者の月2」で、アチュルタニ軍団を打ちやぶり、いまや第五帝国の皇帝となったコリン・マッキンタイア。彼の双子の息子と娘、ショーンとハリーは、コリンの部下であり友人の子どもたちであるサンディー、タマン、そしていまや友好的な相手となったアチュルタニ(ナルハニ)の子どもブラシャンとともに、士官学校に入学。士官候補生として戦列艦インペリアル・テラに乗船していたが、コリン皇帝への反逆をたくらむ者たちによるテロが勃発。士官候補生5人だけが艦載艦イスラエルに取り残され、どこともわからない宇宙を漂うことになってしまった。子どもたちが生存しているとは知らず、悲しみにくれるコリンたち。しかし、彼らに対する反逆の試みは、まだ終わったわけではなかった。ごく身近に潜む危険。ダハクでさえ気づかぬうちに進行していたテロリズムを、彼らは防ぐことができるのか?
 シリーズ最終巻。今回の見どころは、テロに関するスパイ合戦のようなミクロな部分と、ショーンたちが降り立った惑星パーダルでの前近代的な地上戦部分にある。成り行き上、仕方がないとはいえ、戦いに身を投じてゆく5人の若者たち。だが、そこにはスクリーン越しではわからない、目の前で傷つき、死んでゆく人々の姿があり、想像していた以上にシビアな現実といったものがあるのだ。
 相変わらずスケールが大きいのはインペリアル・テラが爆破されたときくらいで、今回は地上戦なので、スケール的には小さい(といっても、いままでがデカすぎという話も)。しかし、その分、若者たちが戦争で感じたことなどが丁寧に書かれていて、雰囲気は、よい。萌AIといわれたダハクの登場は少ないが、このシリーズ、これで完結するには惜しい。ショーンたちの今後も気になる作品である。



「反逆者の月」
「反逆者の月2」
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