真実は痛みをともなう
                  
 「破壊天使」ロバート・クレイス(村上和久訳) 講談社文庫

 ロス市警犯罪共謀課二級刑事のキャロル・スターキーは、三年前、爆弾処理中に恋人を失い、自らも死線をさまよう大怪我を負った。現在はアルコールと煙草づけ、食欲がないために制酸剤を飲んで胃を誤魔化すという生活を続けている。そんなある日、爆弾処理班のリッジオが爆弾処理中に死亡するという事件が発生した。ATF(アルコール・煙草・火器取締局)から派遣されてきた特別捜査官ペルは、それえをミスター・レッドと名乗る犯人のものと断定。捜査を横取りされるのではという不快感を抱きながらも、スターキーはペルとともに、ミスター・レッドの足取りを追っていく。
 しかし、そのころ、ミスター・レッド=ジョン・マイクル・ファウルズは別件の爆弾事件に関わっており、その事件とは無関係だったのだ。FBIの<十大重要手配犯>リストに載ることを楽しみに犯行を繰り返してきたジョン・マイクル・ファウルズは、自らの名を騙られたことに怒りを覚え、ロスアンゼルスに乗り込んでくる。
 3年前の事件で自分は死んだ、と思うスターキーは孤独で投げやりな生活を送っている。そんな彼女が事件に関わることで、ふたたび生きる力を取り戻していくのだが、同じチームの女性ベスは下品な口をきく告げ口屋だし、信頼できると思いかけていたペルもまた、何か重要なことを隠しているらしい。しかも、リッジオの事件はミスター・レッドのものではないと主張したために、さらに孤立。ついにスターキーはひとりきりで動き始める。
 みずからの信念に忠実で、自分の仕事に自信を持った女性が孤独を乗り越えて事件を解決する物語。そう書いてしまうとありがちかもしれないのだが、爆弾が爆発寸前の緊迫した状況にどきどきはらはらさせられるし、脇役まできっちり描かれているために物語に入り込みやすくなっている。上下二巻あるが、一気に読めると思う。




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