今がいい。今が楽しい。ずっとこのままでいたい。時が、還流すればいいと思う。流れ去っていくのではなく、ぐるぐるとただ、めぐり流れてくれればいい。
          
  「ガールズ・ブルー」あさのあつこ ポプラ文庫

 「あたし」、理穂と美咲、如月の三人は、その地域でも底辺の生徒ばかりが通う稲野原高校に通う幼なじみ。身体の弱い美咲は壊れそうな外見とは裏腹な毒舌の持ち主だし、甲子園を目指す兄を持つ如月は高校生とは思えぬほど肩の力の抜けた性格。
 あたしたちは、制服のスカートを短くして、ルーズソックスを履いて、ローファーの踵を踏みつぶすくせがあって、勉強しないで、コンビニにたむろして、きゃあきゃあ騒ぐけれど、万引きも売春もしない。煙草は嫌いだ。夜十一時には眠たくなる。
 
化粧をしてスーパーに入るだけで万引きを疑われるし、花見に来ていれば補導されそうになる。でも、めげたりはしないのだ。毎日が楽しくて、いろんなことがきらきらしているから。
 あさのあつこが描くいまどきの高校生たちの物語。幼なじみの三人だけでなく、三人の周囲を取り巻く面々もそれぞれに個性的だ。稲野原高校の中では成績優秀だけれど、家の事情を考えて就職するか、それとも進学するかを悩むスウちゃんや、甲子園を目指す如月の兄の睦月、姉と違って優秀だけれど、それだけに理穂にいわせれば「暗い」学校生活を送っている理穂の弟真央。それぞれの高校生活が生き生きと描かれていて、さわやかな小説に仕上がっている。
 ……それにしたって、やっぱりあさのあつこなのだ。成績の悪い女の子でも「時が、還流すればいいと思う」なんて使っちゃうし。「還流」なんて理穂みたいな子はやっぱりわかんないんじゃないかなあ……それも偏見? なお「ガールズ・ブルーU」もあるので、そちらもオススメ。少し成長した理穂たちが、将来のことに悩んだりしつつ、今を生きる姿がやっぱりあざやかに描かれている。



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