作品を読み返すたびに、こんなすごいお父さんだったんだという念がどんどん鮮やかになってきて、没後しばらくは自分を責めてましたね。なんでいままで何にもやってこなかったんだって。
              
「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」 水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子  文藝春秋

 タイトルからわかるとおり、これは水木しげる(ゲゲゲ)、赤塚不二夫(レレレ)、手塚治虫(ららら)の三人の娘たちが、父親について語っている本である。対談形式で行われているが、語ったとおりの順番ではなく、いくつかのテーマに関連する対談をまとめて掲載している。
 世間的には(世界的には?)偉大な父親であっても、娘にとっては「お父ちゃん」であり「パパ」である。仕事ばかりしているうしろ姿を見ていても、どれだけ大変な仕事をしていえるのか、どれだけ偉大なのかはわからない。父親の前で他の漫画家のことを褒めて喧嘩になったり、学校では娘であることが嫌で嫌でたまらなかったり。そんな彼女たち、特に父親を失った手塚、赤塚のふたりの娘が、父親探し、自分探しのために父の描いた漫画を読む。娘が父親を、家族が家族を理解することの難しさが伝わってくるようにも思う。
 とはいえ、話はこんな真面目なものばかりではない。むしろ、爆笑につぐ爆笑、偉大な人は非常識さ加減でも偉大だなあ……というエピソードばかり。娘から見ると、父親のファッションや趣味なんていうのは突っ込みどころ満載なんですよね……(笑)。
 それにしたって、机の中から20年前のパンツが出てきたなんていうエピソードは、一般家庭ではまず絶対にあり得ない。これが誰のどういうエピソードだったのかは、読んでのお楽しみ。




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