「よく頑張った」
          
      「岳−ガク−」湧井学(原作:石塚真一) 小学館

 北部警察署山岳救助隊に配属されたばかりの新人、椎名久美は、着任早々から、山に住み着いているかのような男、島崎三歩と出会う。要救助者ありの連絡を受ければ、それがどんなに困難な場所であろうと駆けつけ、いつも笑顔で救助者を助け、ときにはその死をも受け入れる男。新米ということで三歩から山の基礎を学ぶことになった久美だが、ときには無神経でデリカシーゼロのふるまいをする三歩のことを、いまいち信用することができない。とはいえ、厳しい訓練をどれだけこなしたところで、現実はもっともっと厳しい。初めて出会った人の死、山の恐怖、そして自分自身の遭難……――さまざまな経験を乗り越えて、久美は少しずつ成長していく。
 映画化された「岳」(原作は漫画)のノベライズ。ノベライズだから大したことないんだろうなと思っていたら、意外に泣ける話で感動した。特に、何度か繰り返される三歩の台詞、「よく頑張った」は、なんか自分がひとりで誰にも知られないところで頑張っているときに読むとますます泣けるような気がする。
 さて、女性でありながら山岳救助隊を希望した久美には、それなりの理由がある。そして、三歩がいつも笑顔で人を助け続けることにも。短いエピソードが重なって、ひとつの大きな物語を作り出している。
 映画を観に行ってもいいかもなあ……でも小栗旬ってイメージじゃないかも(小栗旬は好きだけど)。三歩のイメージは、もっとなんていうか、山男、って感じの、横幅もデカイ人なんだけどな。



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