「何言うとるの。貧乏には二通りある。
暗い貧乏と明るい貧乏。
うちは明るい貧乏だからよか。
それも、最近貧乏になったのと違うから、心配せんでもよか」

                     
   「佐賀のがばいばあちゃん」 島田洋七  徳間書店

 昭和三十三年。父親を亡くし、かあちゃんと兄ちゃんと一緒に広島で暮らしていた八歳の昭宏は、だまされるようにして佐賀のばあちゃんの家に預けられることになった。はじめての母親との別れ。さびしくってせつなくって、いつまでも泣きつづけていたかった昭宏だけれど、目の前に立つばあちゃんと、ばあちゃんの家の状況がそれを許さなかった。八歳の昭宏でも驚くほどの貧乏暮らし。色白で上品な姿のわりに、たくましいばあちゃんの生き方に、いつしか昭宏もまた、何もかもを笑い飛ばせるくらいにたくましくなってゆく。それでも、かあちゃんがいないさびしさで胸がいっぱいになってしまうことはあるけれど……
 厳しい戦後を生き抜いたばあちゃんと、そんなばあちゃんにのびのびと育てられた少年の物語。食べるものがない、靴がない、クレパスがない。ほんとに何もない昭宏に、クラスの生徒が家からじゃがいもを持ってきてくれたり、餅をもってきてくれたり、先生がわざとお弁当を交換してくれたりする。そうやって、周囲の優しさに支えられ、いつしか、相手に気づかれないようにすることが「本当の優しさ」だと知る昭宏だが、それを実際に自分でするときには難しいことも知る。ひとりの少年の成長を通して、大切なことを教えてくれる。
 本当はお金なんかなくても、気持ち次第で明るく生きられる。
 最初に書いてあるこの言葉が、読み終わったときにはしみじみと胸に響く、そんな本である。




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