ひたすら自分を良く見せようという思いから発信する見栄とは違う、相手をより強く意識したところから出す「かます」気持が必要なときもあるのだ。
             
   「社長、その服装では説得力ゼロです」中村のん 新潮新書

 フリースタイリストとして、CM、広告を中心に第一線で活躍してきた筆者が、芸能人ではなく、一般の人たちに「いかにして服をきこなすか」を説いた本。なるほど、と納得できる部分も多い。
 今年はこれが主流だから、という店員の言葉に乗せられる前に、自分の体型をよく知っておこう。高い服がいいわけじゃないが、服を買うのに安さを喜んでいるだけじゃだめだ。自分の収入や立場に見合った服を着ることも大切。実は重要な足元。小物だけでも雰囲気は変えられる……といった、全体的なセンスについて語った部分もあるが、実はやはり面白かったのは前半部分。
 優秀な上司なのに、服装が理由でどうしても尊敬できない部下。
 カジュアルな格好が許されている職場とはいえ、Tシャツにダボパンという格好で顧客を逃す広告制作会社の若手社員。たかが服装、されど服装。どんな服を着ているかで、取れる仕事もあれば逃す仕事もあるのだ。
 「自分らしい服」を着ることは、決して悪いことじゃない。しかし、それも時と場合による。あるがままの姿から、一歩、背伸びして、緊張感を漂わせることも、若いうちには必要なこと。
 ちなみにこの本、半ばでは、毎日の服に悩む男性についてのアドヴァイスもあります。筆者も、どうせ毎日スーツなんだから同じでしょ、と最初は思ったようなのだが、実は男性には男性の悩みもあるようで。ということで、男子学生諸君、まだまだ遠い先のことだな、などとは思わずに目を通しておくのもいいかもしれません。




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