でも、どうせみんなこんなものだろうと思っていると、寂しいと感じる気持ちさえ、いつの間にかマヒしてしまうのだった。
          
  「四つの嘘」 大石静  幻冬舎文庫

 朝のニュースで流れた、ニューヨークのフェリー事故。死亡者の中に、かつての知り合いの名を見つけた満希子は、思わず高校時代の知人、灰谷ネリのところに電話をかける。死亡したのは、かつて満希子の親友だった美波の元彼で、その後、同級生の詩文が美波から奪って結婚したという、忘れられない男、河野圭史だったのだ。しかも、夕方のニュースで死亡者の中に美波の名前も見つけた満希子は、美波と河野が不倫関係にあったことを直感する。
 つねにリーダーでなければ気が済まない、気が強い美貌の満希子、おっとりと平凡な少女でありながら、初めての恋に猛進した美波、付属校からの他大受験を狙ってクラスメートから浮き上がっているネリ、学校をさぼりがちで何を考えているのかわからない異質感が、やはりクラスメートから距離を置かせている詩文。四人の少女は大人になり、それぞれに、高校生の頃に思い描いていた姿とは異なる生き方をしている。彼女たちの選択は、どのようにしてなされたのか。しあわせなのは、いったい誰なのだろう。
 連続ドラマにもなった作品。
 実は最初に満希子が発見した河野の名前は、夕方のニュースでは消されている。ニューヨークまで駆けつけてみても、損傷が激しいからと、棺の中の美波の顔を見ることはできない。そのために、
「おばさん、ママ、本当に死んだと思う?」という美波の娘、彩の台詞などもあるのだが……これはそういうミステリではないのである。
 主人公たちは41歳。高校生が読んでもおもしろくないだろうけど、それこそアラフォーの女性が読むと、この四人の中の誰かしらには共感できるかもしれない。



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