「きみはいつでもそうなんだ、ジェイン! わたし、わたし、わたし! ひとのことなんて
どうでもいいと思ってるんだ!」
「そんなことないわ!」
「きみは、部下や事件の被害者や、強姦魔や売春婦のことしか考えてないんだ!」
「だって、それがわたしの仕事だもの!」

    「第一容疑者」 リンダ・ラ・プラント(奥村章子訳) ハヤカワ・ミステリ文庫

 連続売春婦殺し。主任女性警部の疑いは調べていくうちに、引き継ぎ前の警部にもむけられる。そのことを察知し、彼女にそむく男性刑事たち。陰湿な証拠隠し。孤独感に打ちのめされ、私生活すら犠牲にしながら仕事に打ち込む姿は、感動的というよりもどこか空恐ろしいほどだ。
 もともとプラントが脚本として書いたのを小説としたのものなので、ストーリー展開はあきがこないようになってるし、読み応えは充分。これも含めてプラント作品ですごいところは、P・コーンウェルの、女性が仕事を持つのって大変だけど、それをわかってくれる恋人がいる。なんだかんだいって、成功も認められてる……というのとは、まったくちがうところ。 女性が仕事を持つのを理解できない恋人は去って行く。成功を妬む男の部下、無能な男性上司、トイレすら共同で使わされるような警察の中で生きのびていくために、なにもかもを犠牲にした・・・・・・そんな生活の、このさびしさはなに? そうやって夜毎に自分に問い掛けるつらさ。そして、出てきた答えは、でもやっぱり自分は殺された少女たちのために全身全霊をかけて仕事に打ち込む。ってことである。
 真似しようとは思わないし、真似できないけど、感動はする。
 女性には、ぜひ読んでもらいたい。男性は・・・・・いやになるかも(笑)。


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