「おまえがいちばん美しいからだよ、ジョシュア」
  「フィーバー・ドリーム」ジョージ・R・R・マーティン(増田まもる訳)創元ノヴェルズ

 すべてを失った不運な男、アブナー・マーシュ船長の元に現れた不思議な青年、ジョシュア。ジョシュアの金でアブナーはミシシッピ川一速い夢の船「フィーバー・ドリーム」を造り上げる。が、ジョシュアにはアブナーも知らぬ恐るべき謎があった!!(笑)
 男の夢、男のロマン。「船は"それ"じゃなくて"彼女"なんだ」という名脇役アブナー・マーシュ船長の存在あったればこそ、この作品は傑作として存在するのだろう。なにせ話はジョシュアが吸血鬼の中の吸血鬼、「血の支配者(ブラッドマスター)」だったという事実が明らかになるところから、さらにはブラッドマスターの地位を賭けて同じブラッドマスターのダモン・ジュリアンと闘う……っていうあたりで大混戦。美しい女性は数あれど、ジョシュアの血しか欲しないダモンの口からくだんの迷台詞が語られるころにはもう、ある特殊なジャンルの好きな女性には特におすすめかも、っていうことになってしまう(手首から血を吸うのにどうして全裸にする必要があるんだろう)。とはいえ吸血鬼ものとしては「夜明けのヴァンパイア」を超えている、と断言したい。
 問題なのは、この本がおそらくすでに手に入れるのはかなり難しい本になってしまっているということ。図書館その他で探してほしい。
 なお、この文章を読むかぎりでギャグだと思わないでほしい。意外にシリアスなしみじみとした感動が得られることは請け合いだ。(ほんとうです)。

2000年、再刊……こんな本を再刊してくれる創元! 最高です(笑)。



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