「恋もすばらしいが、友情も大切にしなくてはね」
 輝かしい恋! 燦然ときらめく友情!
 異性人が歯の浮くような台詞を平然と言ってのけたので、雰囲気がなごんだ。
              
 「エイリアン刑事」大原まり子  朝日ソノラマ

 2198年、恋する国家警察殺人課刑事、レイは、思いもかけない成り行きで、はるか彼方から犯人(ホシ)を追いかけてやってきたエイリアンの刑事ラスと共生することになる。とはいえ、死にかけていたレイの意識はなかなか目覚めず、しかたなく知的寄生体であるラスは、宿主であるレイの許可を得ずに寄生してしまった。そこで起こる、微妙な混乱。しかもラスはレイが恋する相手アキに、種をこえた愛情を感じてしまった。一方、地球へと降り立ったホシのほうも、次々に宿主を変えながら犯罪者組織へと入り込んでいた。折りしも今年は前世紀最大の犯罪者、ハシムドが長い長いコールドスリープから覚める年でもあった。果たして、レイとラスはこの事件を解決できるのか。
 ……って、そういう話ではあるのですが。
 ポイントとなるのはレイと(なのか、寄生しているラスのほうなのか)とアキの恋物語でもあり、殺人課の人間関係でもあり、レイの上司であるダンの複雑な家庭環境でもあるのかもしれない。このように、物語のあちこちにちりばめてある小ネタが、見逃せないほどおもしろい。汚い言葉と感覚的な美しさを協調した言葉との激しいギャップ、小粋な比喩なんてものを楽しむのもいいかもしれない。ともあれ、作者が楽しんで書いているのは十分に伝わってきて、スピード感があるので読むほうもあっという間のひとときを過ごせる。
 まあ、誠実と愛を説く宇宙人ではありますが、本体は緑色のゲロみたいな姿ですからね……自分が寄生されるとなると、話は別かもしれません。
 ちなみに続編もさらにパワーアップ。人間関係の混乱ぶりは1巻めの比ではありません(って、そこがポイントか!)



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