おれって、ほんとうに知らないことだらけだ。それもけっこうだいじなことを知らなかったりする。バカかもしれない。
             
 「おれとカノジョの微妙Days」 令丈ヒロ子 ポプラ社

 「おれ」、庄司なぎさは、ヨーロッパ系クウォーターの美少年。学校ではけっこう人気者だし、自分はなんだってできると思っている小学校五年生。そんななぎさが夏休み、遠い親戚である三反田家に預けられることになった。おばあちゃんが怪我をしたため、ママがパリに行ってしまい、パパはシンガポールに単身赴任中で、ひとりきりになってしまうからだ。ところが、離婚家庭の三反田家母娘は大のオトコ嫌い。コロッケカレーを食べたい一心から、なりゆきで女の子であるとうそをついて三反田家にお世話になることになったなぎさだが、そこでの「オンナ」としての生活は、いままでのなぎさの価値観をくつがえすほどに新しいことばかりだった。そして……
 同い年の三反田もえみと同じ部屋で暮らすことになり、最初のうちこそわたわたしているものの、買い物のよろこびに目覚めたり、ファッションについておしゃべりしたりと、だんだん「女の子」生活にはまっていくなぎさがおもしろい。しかも、思いがけないことにある日まったくタイプでなかったはずのもえみへの恋に気づいてしまうのだが、女同士だと思っているもえみからは、片想いの相手に接近する手助けを頼まれたりして。いったい、なぎさは自分が男であること、もえみへの恋心をちゃんと告白できるのか!?
 ポプラ社が出しているDream スマッシュ! というシリーズのうちの一作。シリーズのほぼすべてがベタベタのタイトルと表紙なのだが、そこはさすがポプラ、中身はラノベよりも数段じょうずな文章と構成の、なかなか楽しめる物語ばかりなのである。オススメ。




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