・・・・・・こんな思いを抱いてはとても生きていけない。こんなことがずっと続くなら、自ら命を絶ってしまいたい。そして心のずっと深い部分では、彼はこれが決して終わらないことを知っていた。
           
「キルガードの狼」 マリオン・ジマー・ブラッドリー(嶋田洋一訳)  創元推理文庫  ダーコーヴァ年代記21,22

 <百王国時代>のアストゥリアス王国。各国は争い、ラランを持つ魔術師たちが<塔>でララン兵器――粘着炎や放射能兵器などを作る時代。アストゥリアス王の甥であり、王の旗手でもあるバード・ディ・アストゥリエン。彼は王の娘であるカーリナを婚約者とし、カリーナの兄ベルトラン王子、将来のラランズジェレミー・ハスターを無二の友人として、洋々たる前途を前にしていたはずだった。しかし、思いもかけない事件が彼を王国から追放し、狼――「キルガードの狼」と呼ばれる存在へとしてゆく。そのころ、<ネスカヤの塔>のラランズ、ヴァージルは、戦争にララン兵器を用いないという<盟約>を提唱していたが・・・・・・
 のちの時代になってもダーコーヴァでは<盟約>は非常に重んじられ、有徳者ヴァージルのことが広く称えられている。この物語ではその一端をのぞくことができるのがひとつのポイント。
 私生児として生まれ、王に認められながらもつねに己を卑下する心や拒絶される怖れを抱きつづけたいたバード。彼にとって生きることは闘いであり、女性もまた征服の対象でしかない。だがそんな彼が、自らのラランで知った真実。バードは真に愛せる女性を見出すことができるのか。
 いやなやつなんだけど憎めない、という・・・・・・こういうキャラクターを書かせるとうまいです、ほんと。ちなみに、ここにも地球人が登場。バードの闇の双生児ともいうべき、ポール・ハレル。マトリクス科学によって、あらゆる意味で「同じ」人間、もう一人のバードがダーコーヴァにやってきたとき、なにが起こるのかはお楽しみ。
 それにしても、こんな時代にも地球人がコミン貴族と接触していることを考えると、やはり、のちの世代のルー・オルトンはの苦しみはなんだったんだ、と繰り返しになるけど思わずにはいられません・・・・・・



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