「きみがつきあう相手にお父さんが手を出したら、どう?」
「あら、シドニー、相手になってやるわ」
         
 「ぼくと彼女とその彼女」 マリジェーン・ミーカー(代田亜香子訳) 角川書店

 ショックプルーフ(防ショック加工)なんていうあだ名を自分自身につけたシドニー・スケート。母親であるM・E・シェプリー・スケートは同性愛者で、ショックプルーフは9歳のときからそのことを知っているけど、M・E・シェプリー・スケートは息子の前では暗号を使ってしゃべり、そのことがばれてないと思っている。父親のハロルド・スケートは再婚相手のローズマリーとともに住み、いつか息子と一緒にプールを売買したいと思っている。だから、息子であるショックプルーフがコーネル大学に進学して獣医学を学びたいなんていうことには懐疑的だ。
 恋人、エステル・ケリーとぎくしゃくしているショックプルーフは、本を、特に性描写がたくさん出てくる本を大量に読み、その中の台詞や文章を暗記して、性的な白昼夢にふけることの多い十七歳。そんな彼の前に現れた年上のいかした女の子、アリソン。ところがどうやら、アリソンの興味はM・E・シェプリーに向いているようで……?
 アメリカでヤングアダルト小説家として有名なマリジェーン・ミーカー(M・E・カー)の作品。
 日本でいういわゆるヤングアダルトとアメリカのものは違う、とひしひしと感じるのは、こういう小説を読んだときである。これを学校図書館に入れるかどうかって話になったら、やっぱりもめる親も出てくるだろうなあ……とかとかとか。いろんなことを考えてしまう。
 出版は1972年、当時は生々しい性描写がスキャンダルと受け取られ、その後は古典的レズビアン小説とも、70年代の「ライ麦畑でつかまえて」だともいわれ、読みつがれているそうである。
 自分にショックプルーフなんてあだ名をつけなければやっていけないほど、シドニーの周囲は混乱、混沌、とんでもない人々ばかり。自分の彼女を母親にとられそうなシドニーが、父親が自分と同年齢の少年とつきあっていることを容認しているロレッタと交わす会話などは、滑稽であると同時に痛々しい。
 日本でこういう作品が児童書関係の賞をとるような時代はまずこないだろう。と、思う。




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