――ぼくたちは、ちがうものだ――
 ひがしは、はっきりと感じました。
         
「青い羽のおもいで」  立原えりか  角川文庫

 立原えりかの作品は、いつかどこかさびしい雰囲気がある。奇妙なかざぐるま売りのおじいさんへ捧げることばで始まった話は、ひがしとみなみ、ふたりの兄妹のもとへやってきた不思議な家族の物語だ。マッチもガスも電気も知らない人々。そして、ひがしのクラスに転校して来た「あの子」は……背中に羽になるこぶをもったあの子は、最初こそためらっていたものの、次第にうちとけ、そしてひがしとみなみの前に、いままで想像もしていなかった世界を見せてくれる。照れくさそうに、恥ずかしがりながら、そっと。けれど、どんなに仲良くなっても彼らは違うものなのだ。どんなにあの子に憧れても、ひがしはあの子にはなれない。そして、あの子もひがしたちの世界では暮らせない。どんなにあの子がみなみのことを好きでも……
 あぶくのように消えてしまうのぞみでした。あの子はとんでいって、みなみはのこるでしょう。
 けれどこの物語は。かざぐるま売りのおじいさん、トラックのしたじきになって死んでしまったむすめの死体を見たときから、気がくるってしまったといわれているおじいさん、自分のむすめは羽のある男と結婚したと語るおじいさんへ捧げた物語なのだ。そう、だから、あの子は帰ってきた。みなみとともに生きるために。みなみを、自分の世界に連れて行くために。けれどそのことが本当にしあわせだったのか? 気が狂ったおじいさんの姿が二重写しになったとき、その答えは出ない。
 これは童話なのだろうか。
 「星からきたひと」の残酷さはなんだろう。少女の前に現れた金のブランコに乗った小さな人。少女が大きくなったらおよめさんにしてあげる、と約束してくれた星からきたひとを、少女はずっとずっと忘れずに育つ。否、忘れたくないと思って育つ。けれど、少女の中に残ったのは他の同じ年ごろのともだちよりずっと早く愛しあうことをおぼえてしまったこころだけ。十九で結婚し、貧しさの中、屋根裏部屋で暮らす彼女のもとに星からきたひとが迎えにきたとき……その結末は、あまりにも現実的で残酷だ。「おくりもの」も、また。
 そういう女は。たくさんいるのです。あてもなく、何かを待ちながら、ひとりで年をとってしまう女。いつか現れるはずだった、自分と結婚してくれる若い男を夢みながら、恋することも知らずに、だれからも忘れられてしまった女。
 この短編集のいくつかは、子どもには子どもなりの読み方が出来たとしても、大人が読んだほうがよりいっそう何かを得られる、そんな物語であると思う。立原えりかの作品の多くが送であるように。美しいことばと情景の中にひそんだ棘。これをできるのは、おそらくは同じように棘を持ち、さびしさを抱えた大人だけだと思うから……



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