その顔は神の顔だった。だが同時に、どこかが確実に神とは違っていた。欠如――そして過剰。はてしない満足と……恐るべき孤独。
             
 「オルドーンの剣」 マリオン・ジマー・ブラッドリー(大森望訳)創元推理文庫  ダーコーヴァ年代記8

 六年前、シャーラのマトリクスを解放することでコミン評議会から追われるようにしてダーコーヴァを去っていったはずのルー・オルトンが故郷の星に戻ってきた。ひとつの都市を破壊しつくし、最愛の妻と自分自身の左手を失った忌まわしい事件に最後の幕を引くために。剣のかたちをしたシャーラのマトリクスを抱いてダーコーヴァに降り立つルー。だが、彼を待っていたのは混乱させられるようなことばかりだった。弟マリウスのふりをして現れた亡き妻の弟、レイフ・スコット。幼なじみのリネル・アイヤールそっくりな地球人の少女キャシー・マーシャル。しかもコミン評議会はアルダランと和解するために、聖なる存在である<監視者>カリーナ・アイヤールをベルトラン・アルダランと結婚させるのだという。どこまでがアルダランの悪しき企てであり、どこまでがコミンの政治的思惑なのか。否応もなく巻き込まれる権謀術数の中、彼が信じられるのは旧友レジス・ハスターと、カリーナだけだった。漠然とした不安をカリーナに抱きながらも惹かれてゆく気持ちを抑えられないルー。
 そしてアルダラン家側につく謎の男、ロバート・カダリン、地球人ともダーコーヴァ人ともつかぬこの男との古い友情と疑惑の中で、ルーはシャーラのマトリクスを破壊できる唯一の武器、オルドーンの剣を手にしようとする。はたして彼は六年前、己が引き起こしてしまった事件の幕を引くことができるのか――
 六年前の事件というのが「ハスターの後継者」で書かれたシャーラのマトリクスの話だが、実は発表された順番はこちらのほうが先。ということでどうなっているかといえば……微妙に違う部分が。だが、まあそれはあまり気にせずに。
 ここでついにレジスがハスター家を継いでハスターの「ちから」を手にすることを決意する。他の家系の力とは異なり、後継者となって初めて得ることのできる「ちから」が明らかになるわけだ。そして、六年前からややその軽薄さやラランの弱さが問題視されていた王子デリック・エルハリンが、今回、ルー・オルトン絡みの事件で発狂。レジスはついに名実ともにダーコーヴァの指導者として期待される存在となってゆく。だが地球帝国がダーコーヴァの混乱を放っておくはずもなく……ついには屈辱的な同盟を結ぶに至るのだが、それはまた別のお話。
 なお、「ハスターの後継者」で死を覚悟したレジスは姉の息子ミカエルを養子としてむかえ、今回の「オルドーンの剣」でルー・オルトンは思いがけないところに自分の娘マルジャが存在することを知る。この子どもふたりがハスターとオルトンという、ふれあえば死に至る「ちから」を持っている者同士でありながらも愛しあってしまう未来のお話も……また別のお話。
 ヒューゴー賞候補作品。


 それにしても、勢いで書いてしまいましたが、これだけ人物が出てくると、もしかしたらぜんぜん理解されていないのかもしれませんね……反省。


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