She is not my hawk. I am her girl, Romilly thought, she has adopted me, not the other way round!
           
Hawkmistress ! (The Age of Chaos) Marion Zimmer Bradley

日本では既に絶版(なんだか長期品切れなんだか…)になって長い、BradleyのDarkoverシリーズ。アメリカでも長いこと手に入らなかった時期があるらしいのだが、現在は違う。ダブルブックになって……つまり日本でいうところの二冊合体本で8ドル前後と、非常にお求めやすくなっている。しかも書店では平積み状態である。
 そもそもこのシリーズはどこから読んでもおもしろい、順番をほとんど問わない話なので、どこから読んでもかまわない。というわけで、今回は読みきりで、タイプの違うふたりの少女が主人公のお話が収められているこの本を選んでみた。ちなみにThe Age of Chaos(混沌の時代)というのはダーコーヴァ年代記でいえば初期の頃、まだ人々が己の力を制御しきれず、むしろ力に振りまわされることの多いころのお話。
 「Stormqueen!」は、Lord of Aldaranの娘、強力な力、Laranを持ってうまれたDorilysが主人公。嵐の夜にうまれた少女は美しく成長するが、力を己で制御できるようになるためにTowerからleronisのRenataらが招かれる。だが、そのときすでに戦争が始まり、Dorilysの運命もまた激しく移ろってゆく。
 「Stormqueen!」ではDorilys以外の話も多く語られ、救いの部分がないわけでもない。だがLaranの持つ特質上、狂気におかされるようにして自分の力や性質を抑えきれなくなってゆくDorilysの姿は悲劇的だ。その力が強ければ強いだけ、せつない哀しさが後に残る。
 それに反して同時収録されている「Hawkmistress !」のRomilyは、意にそまぬ結婚から逃げ出し、己のLaran、動物と心をかよわせるMacAran家の力を用いて少年のふりをしながら旅をする、そんな自立心と力強さを持っている。旅の途中、少年の姿をしながらも少女らしい思慕を寄せる相手が出来たり、後半、思いもかけないことからSwordwomanになるなど、少女の成長ものとしてはBradleyらしい作品になっているということもできるだろう。RomilyもまたLaranにふりまわされないわけではないのだが、一度は自由に放したはずのPreciosa、彼女の鷹が自らの意志でRomilyに従い、ときにRomilyを助け、支えとなってくれるなど、Laranの良い面も多分に見られるのがうれしいところだ。特にこの、RomilyとPreciosaの交流がすばらしく、うらやましくなってしまうほど。
――さて。いま、わざとLaranやLeronisといった言葉を出してみた。このシリーズには固有の造語(スペイン語が基本になっているらしい)があり、それを理解するのがつらいかも……と、読み始める最初は思うかもしれない。だが、Darkoverのおもしろさの一面は、ひとことでいえば、パズル。人間関係、年代、土地、そして一読しただけではわからない言葉。それらを複数の本を読むことによって蓄積していく、そういう楽しさでもあるのだ。一ページごとに辞書を引かないと安心できないという洋書初心者には勧めないが、「わからない単語が多少あってもいいよね」くらいの気持ちで読めるようになっている洋書中級者以上にはオススメ。




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